こしょこしょ噺

好きなもののこと。育児のこと。あとはつぶやき。一姫二太郎を育てながらふらふら働いてます。

和訳メモ:Onew talks subverting expectations on ‘Dice’: “I wanted to completely break out”(2022/04/27 NME)

先日Gasoline期のBillboardによるキーくんインタビュー記事を読んで、もしかしたら同じコロナ期にDICEをリリースしたオニュさんも何かしら海外からインタビューを受けているのでは…と思い過去記事を漁ってみたところ見つけました!「NME(New Musical Express)」というイギリスの老舗音楽メディアからのZoomによるオンラインインタビューにオニュさんが答える、というスタイルの記事です。英語が決して得意ではないはずのオニュさんが、通訳ありとはいえ英語によるインタビューを単独で、しかもオンラインで受けるというシチュエーションは、オニュさんにとって結構緊張する時間だったのではと想像します。予想通り、最初はド緊張しているオニュさんの様子がこの記事では細やかに記載されていて、かつこの記者さん独特の詩的な表現でオニュさんをほめちぎっている素敵な内容だったので以下その全文訳記録します(※意訳)。
引用元の記事はこちらを参照ください。

www.nme.com

オニュ、『DICE』で人々の予想を覆したことを語る:”私は完璧にブレイクしたかった”
SHINeeのリーダーは、彼の唯一無二の声について、そしてその完璧主義の性格によってアルバムリリースを8か月遅らせたことについてもNMEに明かした

By Tássia Assis 27th April 2022

オニュがZoom通話の画面をよりのびのびと見始めるようになるまで7分ほどかかりました。それまでは、通訳が彼の受け答えを韓国語から英語へ翻訳するのを待つ間は、SHINeeのメインボーカルでありリーダーである彼は礼儀正しく下を向いて、ほんの時折、あたかも少し開いたドアから覗くようにこちらに目を向けていました。

内向的な人にとっては、それは特段心配のない振る舞いと言えるでしょう。それは興味が無い訳でも、寝不足だからでもありません。ただZoom通話自体がそもそも歓迎される環境ではなく、彼にとっての母国語を話すことができないジャーナリストからソロインタビューを受けるという状況は、それに慣れていない限りは気が引けやすい状況なのです。オニュはとても注意深く、リラックスする前にZoom通話が始まったというだけのことだったのです。

その場の空気は、オニュのユニークな特徴についての考察などより深いトピックに話題が移るとすぐに温まり始めました。「もちろん、(その特徴は)私の声だと言わざるを得ません。多くの方もまたそう仰ってくれていると認識しています。」彼は指を組み唇に押し当てながら、まだ少し慎重な様子でそう答えました。ですが私がそれに同意すると、彼はついに打ち解けた様子で「Thank you」と英語で答え、優しく笑いました。「私は自分の声でもって全ての感情すべての感覚を表現したくて練習やレッスンに多くの時間を費やしてきましたし、声を通して私自身の新しい側面をお見せしようと取り組んでいます。」

伝説級のK-POPグループSHINeeとして2008年にデビューして以来、オニュとその比類なき声の音色は業界内で着実に成長し力を持つようになりました。グループ活動とは別に彼は音楽的なコラボレーションやサウンドトラックへの参加や数多くのショーへの出演、いくつかのドラマや、2021年の『ミッドナイト・サン(今年も同じ役を演じる予定である)』等のミュージカルでの演技を行っています。「私はこれまでのキャリアの中で数多くの経験を重ねてきました。」と、オニュは思慮深く振り返ります。「そして、経験を通して自分が何が好きで何を好まないかに気づいたんです。ですが、それらすべてを乗り越えることで、私は全部のことをできるようになっていきました。」

多くの人々はオニュのことを感情を揺さぶるバラードのクルーナー*1と連想しますが、それは彼が持つ無数の才能のうちの一つにすぎません。「(人々は)恐らく、もっと深くて感情を揺さぶる曲で構成されたアルバムを予想していたと思います。」オニュは2018年にリリースされた、彼の荘厳なソロデビュー作『VOICE』に言及しました。「だけど、私は完璧にブレイクしたかったし、私自身の新たな側面をお見せしたかったんです。」その熱い願いから生まれたのが『DICE』という、彼の楽しい二枚目のミニアルバムです。この二つのアルバムの違いをより分かりやすく伝えるために、オニュは青色を喩えにして話してくれました。「『VOICE』の方が少し昏くて深い感情が込められた作品ですが、『DICE』はより輝いて明るい青色になると思います。」

そしてオニュのアルバムが穏やかで深い青で表現されるならば、彼の声はその補色のオレンジであり、崇高なコンビネーションに優しさとくつろぎを添えています。「私の声は人々の心に響くものだと思います。」彼はそう内省します。「ある意味ではこの声の特長は温かさであり、誰かにしっかり抱きとめられているような気持ちにさせる声だと思います。それは私がいつも自分の声にそうあってほしいと望むことであり、そうありたいと目指していることでもあります。」

確かに、このアルバムの6つの曲を通して、『DICE』は夏のそよ風のように転がって、至福の波の中に聴き手を包み込みます。「私は誰に対しても前向きな影響力を与えられる存在でいたかったんです。」オニュはそう説明し、彼がこのアルバムで目指している一番の目標はシンプルに幸せを届けることだったことを付け加えました。「アーティストにとって自分の領域を広げることは大事ですが、私が一番に注力しているのは、活力と希望を人々に届けることなんです。」

はじけるような『Sunshine』から敬虔な雰囲気の『여우비 (Yeowoobi)』に至るまで、どの曲もそれぞれ独自の悦びの風味があります。しかし、オニュが言う(※訳者補足※ファンとの)仲間意識は、このアルバムをしめくくる曲であり、オニュが唯一作詞に参加した『In The Whale』で最もよく感じられます。「私がこの曲の制作を始めた時、これは私のファンのために作りたいという想いがありました。」オニュはそう語りました。「ですがもう少し広く言えば、私はこの曲を初めて聴いた人誰もが、まるで誰かに自分の話に耳を傾けてもらい、手を差し伸べてもらっているような感覚になれるような一曲にしたかったんです。」私たちの日々の暮らしの中で、オニュは怪物と闘う代わりに手を差し伸べ、私たちの闇を探索するように誘います。
『海を泳いでる』『ここは In the whale』『君のそばにいるよ』
彼は、そう歌います。

私たちはアイドルと聞くと、まばゆい個性を持った、スポットライトの下でスーパーマンになる生まれながらのエンターテイナーを連想しがちですし、そのイメージはどれもある程度正しいです。しかしオニュの強みは彼の内省力ー言うなれば彼のクジラーにしっかりとあります。彼はすごく派手な人でも非常に活発な人でもないかもしれませんが、彼の優しさはまるで家のような雰囲気を持ったものであり、その強みは損なわれるべきではありません。著作家スーザン・ケインの著書『Quiet: The Power of Introverts In A World That Can’t Stop Talking*2では、オニュのような人々は『'自分の殻を破る'ように駆り立てられているのかもしれず、そういった有害な圧力は、一部の動物はどこに行くにも自然とシェルターを抱えていること、そして人間の中にもそれと全く同じタイプの人がいることを認めようとはしないのだ』と述べられている。

オニュは、彼のアーティストとしてのペルソナとイ・ジンギの間の唯一の違いは、スタイルを形作られているか否かだけだと語ります。「私には輝かしい時も悲しい時も両方がありますが、それらすべてが組み合わさったものが私という人間なんです。」そう彼は付け加えました。完璧主義者として知られる彼は、今回のアルバムのリリースがもう少し早ければ「良かっただろう」(もともとこの作品は丸8か月早くリリースされる予定だった)と考えると同時に、「タイミングは非常に重要ですし、その時が来た時に確実に準備が整っていることが常に重要」という考えも明かしている。オニュは完璧に準備が整っているとは思いもしなかったがー(※訳者補足※準備が完璧だと自分で)思える人はいるだろうか?ー振り返った時に、『DICE』をもう少し早くリリースできれば「100%の出来により近かった」かもしれないと思いを巡らします。

完璧なタイミングというのはどこにも存在しないので、彼はより適切な表現に言い換えて話を進めました。「今回は、私の音楽的な幅や経験値を広げ、年齢を重ねる前に何かを行うのにちょうど良い時だったと感じています。私は今が人生最年少だから…」彼は笑い、この会話が始まった当初の恥じらった様子はすっかり消えていました。「歌手でいることはこれからも続けていくと思いますが、ダンスとなると年齢が絡むので話が違ってきます。ダンスについても自分にその力がある限りは、できる限り取り組んでいきたいですね。」

===翻訳ここまで===

読めば読むほど、とてもユニークで、適切かつ丁寧にオニュさんの様子を観察しその良さを言葉にしている良い記事だと思いました。音楽誌のインタビューにおいて、作品本体だけではなく、わざわざスーザン・ケインさんのベストセラー本を引用してまでオニュさんの性格的特徴について言及しているのは、それだけこの記者さんにとって彼のキャラが唯一無二のものだったからではないでしょうか。

聴き手の幸せを一心に願うオニュさんのぶれない姿勢が、この記事を通して改めて読み取れたことも良かったです。この先の彼には今まで以上にうんと健康で幸せであってほしいと、今日も強く願います。

 

*1:ゆったりしたバラードをささやくように優しく歌う歌手

*2:著者と著作の詳細ページへのリンクは訳者の備忘用に貼りました