こしょこしょ噺

好きなもののこと。育児のこと。あとはつぶやき。一姫二太郎を育てながらふらふら働いてます。

【ネタバレあり】イマーシブシアター「Anima」を観た

SHINee日本ガイシ公演きっかけに推し始めたダンサーのKurumiさんが出演する舞台があると知り、迷わず足を運び、そこでとんでもない身体表現の世界に出くわした記録です。作品の内容や演出に関するネタバレを含みますのでこれから観に行く方はご注意ください。

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↑会場であるBnA_WALLに到着。日本橋界隈の路地に、それは突然現れた
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↑扉を開けると、そこはもう作品の世界。明らかに玄人の表現者と思われる、演者なのか観客なのか分からないような人々が思い思いにそこで開演を待っていた。紛れ込んでしまったど素人の私、非常に焦るもとにかく背筋をぴんと伸ばして待機
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↑ホテルの「チェックインカード」。これを持って、最初の夢の扉を開ける

■作品全体のこと

日本橋のアートホテルを一棟まるごと貸し切り、そのロビー、客室、階段、エレベーター、廊下すべてが舞台のセットとなり、観客たる私たちはそこを自分の足で行ったり来たりしながら作品を目撃していく仕組み。この時点で「客席に座って観る」という一般的な観劇スタイルとは全く異なりました。人によって行先もフロアを巡る順番も違うので、それぞれ目撃する景色が異なり、それらが組み合わさって自分だけの観劇体験が出来上がるという構成がとても面白かったです。特に螺旋階段の使い方が印象的で、螺旋階段をぐるぐるぐるぐる上がったり降りたり、時には演者も私もそこから上を見上げたり下を覗き込んだりと、「夢」をテーマとしている作品だけにその階層を行きつ戻りつしている感覚を物理的に得ているような気持ちになりました。
演者は数名の舞台俳優さん以外は全員プロダンサーで、そんな彼らが客室、階段、廊下全部使って身体表現を繰り広げていました。こぢんまりとしたアートホテルなのでとにかく演者との距離が近い!演者の息遣いとか、額に浮かぶ汗とか、つけてる香水の香りが分かる程度には近い。廊下で自分の横をさっと演者が踊りぬけていったり、次の部屋に行こうとしたら突然演者に肩をつかまれて別の部屋に誘導されたりと、否応なしに作品に巻き込まれていくというすごくすごく贅沢な時間。

■それぞれの「夢」のメモ

ここからは、私が各場所で目撃した「夢」の切れ端を記録します。もっとちゃんと覚えておきたかったのに、既に記憶に霞がかかっているのが口惜しい。手からこぼれ落ちる砂のような感覚も、それもまた夢に近しいのかもしれない。

  • 薬草?の匂いがする網が張られた部屋。後ろ向きの男。鳥のさえずり→何かがきしむ音→電子音に合わせて首を手を指を足を小刻みに震わせる(指の関節一つひとつがあんなに細やかに動くのを間近でみたのは初めてだ)。ベッドサイドにはユングの本。手に取ってすぐにやめる男。網の外でみている私たちに迫る。男の右手が私の顔面5cmぐらいの近さまで迫る。右手親指につけた楕円型の指輪が綺麗
  • 甘い匂いがする、着物が掛けられた部屋。そこに横たわる妖艶な女。肉感のあるしなやかな動き。案内役の女にも執拗に絡もうとするもそれを自然に手で制する案内役。
  • 疲弊した女。ふらふらと部屋から出ていき廊下で別の女に出会い嬉しそうに抱擁するけどすぐに離れていってしまう。案内役の男に「無理しないで」と言われ力なくうなづき去っていく
  • 夢を顕微鏡で覗く
  • 浦島太郎と乙姫の想い出
  • あしたはまべをさまよえば むかしのことぞしのばるる
  • 廊下で繰り広げられる、無意識の感情たちのせめぎ合い
  • 夢の底で迎える「大団円」。ただ、それはハッピーエンドと言えるのか

■Kurumiさんのこと

Kurumiさんはとある演者の妹役として出演していました。SHINeeのステージで彼女の踊りを初めて観たときは、若干20歳でなんて完成された踊りをするのかと驚愕したが、今回超ベテランダンサー陣の中で舞う彼女をみると、その踊りのとびきり瑞々しい一面にも気づきました。スキル云々ではなくて、動きからほとばしる雰囲気がとにかくきびきびとしていて、明るくて、フレッシュ。全体的に重苦しい世界観の作品の中でそれが際立っていたように思います(彼女が演じているキャラクター設定を知ると、その明るさが逆に悲しくて仕方ない気持ちにもなりました)。これからどのように表現の幅を広げていくのか、本当に楽しみなダンサーさん♪

SHINeeきっかけから広がる世界

Kurumiさん目当てで軽い気持ちで足を運んでみたら、思いがけず情緒がとても忙しい没入体験を得ることができた時間でした。普通の舞台以上に設計がすごく難しい作品だと思いますがぜひまた再演してほしいし、何度も何度も観て自分なりの考察を深めたい素敵な作品です。

こういった体験に自ら足を運ぶようになるとはなぁ…SHINee推す前の自分だったら想像もつかないこと。ステージや舞台を現場で目撃する素晴らしさを教えてくれた彼らにも改めて感謝です。

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↑来場者プレゼントは作品のパンフレットとカンパリネグローニというお酒でした(!)初めて飲むリキュールでしたが、作品に登場する薬草酒を彷彿とさせるような香りと、甘さと苦みのバランスが良い感じです。飲みすぎ注意♡