こしょこしょ噺

好きなもののこと。育児のこと。あとはつぶやき。一姫二太郎を育てながらふらふら働いてます。

映画「月光の囁き」を観た(まっすぐに歪んだ青春とか大きな愛とか)

ふとしたきっかけで、観たい観たいと思い続けていた映画「月光の囁き」を観る幸運に恵まれました。その感想に関する記録です。(一部ネタバレあり。)

■監督:塩田明彦
■1999年製作/100分/R15+/日本
■配給:ビターズ・エンド
■劇場公開日:1999年10月23日

■25年越しの映画鑑賞

この映画のことは、公開当時から知っていました。確か雑誌か新聞の新作映画紹介の記事で見かけて、眼帯をしたお姉さんとめっちゃ怪我してるお兄さんが寄り添うポスター写真に目が釘付けになった記憶があります。ちょっと普通でない凄味と、綺麗でファンタジックな雰囲気の両方が感じられるところが、思春期に足をつっこみかけていた当時の自分に刺さったのかもしれません。
なんとか映画館まで観に行きたいと思うも、がっつりR指定な映画&一緒に年齢詐称して観に行ってくれる友人がいるわけでもなく、その時は観に行かずじまいでした。その後も近所のレンタルビデオ屋さんで取り扱いがなかったり、なかなかDVD化されなかったりとタイミングが合わず気づけば25年ぐらいが経過。それが先日とあるきっかけで月光の囁きというキーワードを思い出し調べてみたところ宅配レンタルで取り扱いがあることが判明し、そこからわずか1日足らずで視聴が叶いました。何事もご縁とタイミング!

■印象的だったところとか

・初々しい恋を実らせて順調に交際スタートしたかに見えた主人公カップル(紗月と拓也)。大好きな人と両想いになれて幸せいっぱいの紗月の表情と、「普通の」恋人関係ではどうしても満たされない拓也の苦しそうな表情の切ないすれ違い(もちろん、拓也が紗月に対して隠れて行っていたことそのものは犯罪だけど)

・「紗月の犬になりたい」と言う拓也に対して「紗月:だったら主人として命令する。帰れ」「拓也:いやだ。犬が主人の言う事聞くのは一緒にいられるからだ。散歩の途中に帰れと言われて帰る犬はいない。」「紗月:そんなん言われて私はどうしたらいい?自分勝手すぎる」という主旨の台詞の応酬。お互い妙に筋が通っていて印象的だった

・とある仕打ちの後。「紗月のすべてを知りたい」と振り絞るように言う拓也に対して、紗月が「普通に付き合っていたら、もっと知れたとは思わんのか?」と悲しさや悔しさが入り混じるような表情で言い、そのあと一気に決意したように表情が変わるところ(下僕をいたぶるご主人様的な表情へ)。その表情を目に涙を浮かべながらしている様子に鳥肌がたった。この女優さん、紗月役がはまりすぎてる。

・映画ラスト。紗月の言動が原因でがっつり大怪我した拓也と草むらで並んで座りながら「ギブスが取れたら、海でも行こか」と紗月が当たり前のように次の約束をするところ。二人の結びつきはこれからまだしばらくはちゃんと続いていくことを暗示するラストは、そこだけは王道青春映画的なハッピーエンドに思えた。

■おわりに:惚れた弱み

終始、紗月視線で観ました。恋人同士のよくあるほほえましい関係を拓也と築きたいという紗月の願いは結局最後まで叶わず、一度は拒絶してみたものの、それでも拓也が大好きなゆえに、その変態的な嗜好も受け入れて彼が望む通りのご主人様になっていく彼女の愛の形が私にはあまりに健気に見えて、一人しくしく泣きながら視聴しました。ご主人様は紗月でも、結局この関係性の手綱を握っているのは拓也なのかなと。虐められてるふりして、ずるいぞ拓也。彼らの関係が終わりを迎える時までに、きちんとした形で拓也が紗月に対して愛をありがとうと言えたことを願います。

ぱっと見は変態的で歪んいるのに根っこの部分は爽やかな青春映画、というそのギャップは公開当時のポスターを見た時の印象そのもので、私好みのギャップたっぷりな良作品でした!25年というちょっと長めの時間は空いたけど、観ることができて本当に良かった。

そして、今回この映画DVDをもう一度探すきっかけをくれた推し様にも、ありがとう。(月が綺麗な夜に届いたボイスメッセージを聴いて、『まさに月光の囁きやん!』と思ったのが実はきっかけ。これもまた、ご縁。)